内省の海

持病との付き合いや日々思うことをつらつらと

依存

あくまで自分の観測範囲内だが、HIV陽性者にはセックス依存傾向の強い人が多いと感じる。

セックス依存者はコンドームを使用しないことが多く、そのことからも彼/彼女らにHIVを含むSTD罹患者が相対的に多いことは想像に難くない。

かくいう僕も感染前はセックスに依存していた。

過去記事で「自分は他者の承認なしに自尊感情を得られない」と述べたが、その最たるものがセックスで求められることだった。

以前、好意を寄せていた人から手痛い仕打ちに遭ったことで恋愛に対する自信をすっかり失ってからというものの、体を求められることは最も手っ取り早く自分の存在意義を確かめられる手段だった。

暇さえあれば出会い系アプリでセックスの相手を渉猟していたし、相手が見つからなければ持て余した性欲を発散するため、ポルノサイトを閲覧しながら猿のように自慰を繰り返す、そんな毎日。

その末路がこれ(HIV感染)である。

 

ではHIV感染後、その傾向はどのように変わったか。

感染発覚直後は性欲が湧くどころか性的なものに触れることさえ忌避していた。

しかし時間薬とはよく言ったもので、1ヶ月もすれば以前ほど頻繁ではないにしろ自慰も行うようになっていた。

ただしセックスに関してはそうはいかなかった。

ある程度、性欲が戻ってきたところでそういう機会に恵まれたとき、まったくイクことができなかったのだ。

快楽を求める気持ちより、相手に感染させるかもという不安(もちろんセーフだったが)のほうが勝っていたのかもしれない。

それから服薬を続けてウイルス検出限界以下、いわゆるU=Uとなり、そうした心配の必要もない今となっては、セックスなしの生活が当たり前になっていた。

たまに魔が差しても自己処理で十分にやり過ごすことができる。

 

ちょうどその頃から、ある男性とデートを重ねるようになったのだが(彼についてはまた別の機会に)、そこでまた別の問題が浮上した。

彼は内面は魅力的だったが、外見はまったく僕のタイプではなかったのだ。

だからいざそういう場面になったとき、自分のムスコがちゃんと反応するか自信がなかった。

結論から言うと、それは杞憂だった(笑)

むしろ内面に魅力を感じないと、自分はもう勃たないんじゃないかとすら思えた。

それはそれでセックスに対するハードルが上がってしまったと言えなくもない。

 

話を戻そう。

感染発覚からしばらくの間、性的なものから距離を置くことは多くの感染者に共通しているように見える。

その後、性欲を取り戻すことは、前を向いて進む活力が得られたという意味でも喜ばしいことだろう。

問題は、感染前と同じセックス依存傾向に揺り戻されてしまう場合だ。

残念ながらTwitterでは、検出限界以下かどうか定かではないにもかかわらずセーファーセックスに努めないHIVキャリアも多く見られる。

そんな人たちに僭越ながら僕がアドバイスできるとすれば、月並だが「セックス以外に夢中になれるものを見つける」ということだ。

僕は感染を機に仕事を休職し、以前から興味のあった業界に進むため学校に通いだした。

そこでは幸か不幸か、予想をはるかに上回る量の課題を課されて半ば強制的にセックスから遠ざけられるかたちとなった。

学校修了後も将来に向けて勉強することにやりがいを感じる今は、自尊感情をセックスに頼ることはなくなった。

もちろんそれは実家が都内にあるなど、自分の環境が恵まれていることは百も承知している。

それでもかつての僕と同じように「自信を得るためのセックス」に依存している人は、趣味でもなんでもいいからセックス以外に打ちこめるものを探してほしい。

そして、それでもどうにもならないというときは医療機関やカウンセリングを受診してほしい。

僕自身、抑うつ気味になって精神科を受診した際、(セックス依存こそ伏せたものの)そこでの医師の助言は今でも大きな指針となっている。

そして自分が新たなHIVの媒介者にだけはならないでほしい。

それだけが僕の切なる願いだ。

 

<参考>

読みながら自分にもかなり当てはまると思った漫画