内省の海

持病との付き合いや日々思うことをつらつらと

美容室という名の異空間

数年ぶりに美容室に行くことにした。

生まれつき毛量が多いため、カット直後のスタイリングがひと月と保たず、毎月の美容室代も馬鹿にならなかった。

いわゆる1000円カットにも行ったことはあるがあまりいい思い出がなく、どうしようかと懸案していたところ、友人からカット専門店なるものを教えてもらったのが数年前。

そうした業態店は1000円カットより数百円ほど高いものの、若い顧客も多くおしゃれカットにも対応しているとのこと。

一人暮らしを始め、近所にお気に入りの店を見つけて以来、その圧倒的な安さからもっぱらカット専門店のお世話になっていた。

しかし実家から通うにはさすがに遠く、また店側から定められた期限内に再来店することで格安で切ってもらえるというシステムだったため、だらだらと逡巡しているうちに期限を過ぎてしまった今、あえてその店に行く理由もなくなってしまった。

そうこうしていると髪もだいぶ伸び、ここまで長くなったならいっそパーマでもあててみっか、と思った次第である。

 

前置きが長くなったが、数年ぶりの美容室は驚きの連続だった。

まず席に着くと「お飲み物はいかがされますか?」と訊かれて面食らった。

何があるのか尋ねるとコーヒー紅茶はもちろん、麦茶緑茶昆布茶はてはコンソメスープまで、ちょっとしたカフェ並のラインナップだ。

しばらくするとサイドテーブルに頼んだホットティーと小袋に入ったお菓子が置かれた。

一服つきながら美容師に希望のヘアスタイルを伝えたのち、シャンプー台まで移動するよう促された。

シャンプーされながら「飲み物を出してくれるなんていいサービスですね」と美容師に話しかけると「最近はどの美容室でもやってますよ〜」と事もなげに返された。

近頃の美容室のおもてなしレベルがそんなことになっていたなんて。

隔世の感を覚えながら元の席に戻ると、腕が疲れないよう三日月型の巨大なビーズクッションが膝の上に置かれた。なにこれ快適。

パーマをかけられている間、改めて店内を見回すと一昨年オープンしたばかりということもあり、あらゆる設備から真新しい印象を受けた。

随所にドライフラワーやアンティーク調の小物、よくわからない幾何学形のオブジェが飾られ、それらは店内をより洗練された空間にするとともに、内装に対するオーナーの並々ならぬこだわりを感じさせた。

極めつけは帰り際に入ったお手洗いで、当然のように鎮座しているイソップのハンドソープ。参りました。

 

過度なおしゃれ空間に若干あてられたものの、接客から仕上がりまで何もかもがハイクオリティで、会計は普段行くカット専門店の6倍以上(パーマもあてたんだから当然だが)だったが、非常に満足のいく体験となった。

しかし今回は新規限定のネットクーポンを利用したうえでこの金額だ。

今までカット専門店に通っていた頻度でこのレベルの支出が続いたら、年間に充てる美容室代としては明らかに予算オーバーである。

今後は近所のカット専門店と交互にローテーションしながら、たまの贅沢としてこのおしゃれすぎる異空間を訪れようと思った。